約 1,237,016 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1095.html
※この作品は以下のものを含みます ドスまりさ×2 善良なゆっくり 悪辣なゆっくり 制裁要素 虐待お兄さん それでも良い方のみ、以下にお進みください ゆっくり禅譲 あるところに一匹のドスまりさがいた。 外敵が少なく餌の多い森林部に暮らし、とても大きくなったまりさだ。 森に生えたキノコを食べて育ち、ドス特有のドスパークやゆっくり光線を身につけるに至った。 まりさには、かつては他に姉妹もいたが、寿命や事故でそれぞれ命を落としていった。 そも、生物として脆弱なゆっくりがドスと呼ばれるまで成長するには、豊富な経験と多大な知識、そして何よりも運が必要だった。 そういった意味で、このドスまりさは強運の星の下に生まれたと言っても過言ではないだろう。 「ゆっへっへ、まりささまもおおきくなったし、そろそろむれをもってもいいころなんだぜ。 もりをでて、てきとうなむれをまりささまのものにするんだぜ」 ただし性格は最低だった。 ドスといえど、元がただのゆっくりである以上、性格はそうそう変わるものではない。 ゆっくりへの情に篤く、人を畏敬し両者の仲を取り持つような存在になるには、またより多くの時間が必要なのである。 そういった意味でこのドスまりさはまだ若輩であった。よって便宜上、このドスまりさを若ドスまりさと称するものとしよう。 「ゆっゆっゆ! おらおら、どすまりささまのおとおりなんだぜ」 誰もいない森の中を、その巨体を揺らしながら、若ドスまりさは出て行った。 あるところに一匹のドスまりさがいた。 人里にほど近い場所にいる群れのリーダーを勤めるドスまりさである。 このドスまりさはドスの中でもかなり長く生きており、まさに歴戦のつわものといった風情であった。 こちらは便宜上、老ドスまりさと呼ぶことにしよう。 老ドスまりさは、非常に責任感が強く、真面目なドスであった。 群れを護ることは当然のこととして、群れに属さないゆっくりや人間とも、可能な限り有効な関係を築こうとしていた。 南にれみりゃ・ふらんあればこれを蹴散らしてゆっくりを護り。 西にいじめられるめーりんあれば間に入ってこれを助け。 北に人間の里あれば「あそこには行くな」と群れに教え。 東に畑持つゆうかあれば群れには手出しさせないから安心しろと言い。 兎にも角にも、群れとその周囲の環境を護るため東奔西走。良きリーダーであろうとするあまり、ゆっくりできる日は一日もなかった。 なおかつ、群れの大半はそんな老ドスまりさの考えをあまり理解してくれなかった。 何度駄目だと言っても、自分の力を過信したゆっくりがれみりゃや人間に殺されたり、めーりんやゆうかを虐めたりするのだ。 幸いにして相手側に被害を与えたことは今のところないが、それも時間の問題であった。 元々からして、この群れはあまり素行の良くない群れであったのだ。それをなんとかしようとしたのが老ドスまりさであった。 だが全く学習してくれない群れの皆に、老ドスは疲れを感じ始めていた。 その姿たるや、さっさと引退して楽隠居を決め込みたい老体そのものであった。 そんな折である。 「ゆっ! どすがきたんだぜ! みんなこのどすまりささまのいうことをきくんだぜ!」 若ドスまりさはたまたま目に付いた群れの前に飛び出すと、早々にリーダー宣言を行った。 しかしゆっくり達の反応は、若ドスまりさの予想とは異なっていた。 「ゆゆ!! どすがもうひとりきたよ!!」 「どうしよう!? とりあえずれいむたちのどすをよんでくるよ!!」 「ゆゆゆ?」 若ドスまりさは困惑した。この群れにはもう他にドスがいたのか? 「ゆっ! 自分以外のドスまりさを見かけるのは久しぶりだよ! どうかゆっくりしていってね!」 やがて、群れのリーダーである老ドスまりさが姿を現した。 両者の大きさは同じほどであるが、見るものが見ればその纏う雰囲気の違いというものが一発で分かっただろう。 貫禄というか偉容というか、老ドスまりさにはそういったものが満ち溢れていた。 対し、若ドスまりさはそんなもの微塵もない。 また初めて山から下りてきたので、当然、ドスに対する信頼の証である髪の毛のリボンも一本もない。 これだけでどちらが格上か分かろうというものだ。 しかし若ドスまりさはそんなこと全然分かっていなかった。 「きょうからここはまりささまのむれなんだぜ! おいぼれどすはとっととでていくんだぜ!」 ここに虐待お兄さんがいたら若ドスまりさを指差してゲラゲラ笑っていたことであろう。 それほどまでに若ドスまりさの言動は身の程知らずであった。 体格とパワーが同じなら、ものを言うのは経験の差である。その点、二匹の差は天地ほどの開きがある。 ここで老ドスまりさが戦おうものなら、一分と持たずに若ドスまりさは地に伏すことであろう。 しかし老ドスまりさの発言も、また意外なものであった。 「分かったよ! この群れはまりさに任せて、私は出て行くよ!」 ここに虐待お兄さんがいたら顎が外れそうなほどに口を開いて呆然とすることだろう。 何しろ老ドスまりさには、この若輩者に立場を譲る意味が全くないからだ。 若ドスまりさも、これには流石に驚いた。 若ドスまりさとしては、群れの目の前で現リーダーを叩きのめし、自らの地位を不動のものとするつもりであったからだ。 老ドスまりさはゆっくりと説明を始めた。 「実は、もう私も歳をとってしまったから、そろそろ引退しようと考えていたんだよ! ちょうどよくまりさが来てくれたことだし、群れのリーダーは若くて強いまりさに譲ろうと思うよ!」 「ゆっ、そういうことなら引き受けてやらなくもないんだぜ!!!」 強いと言われて、若ドスまりさは得意満面である。 このドスは自分の強さに恐れをなし、屈したのだ。自分は戦わずして勝利を納めたのだ。若ドスまりさの中ではそういうことになった。 「そうと決まれば、まずみんなにリーダー交代を教えなきゃいけないよ! れいむ、群れのみんなを広場に集めてね!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 一匹のれいむが、群れの仲間達を集めに走り去っていった。 それから一時間ほどして、全てのゆっくりが広場に集められた。 老ドスまりさと若ドスまりさは、普段老ドスまりさが皆に話しかける際に使っている盛り土の近くに控えた。 「ゆゆゆ? どすがふたりいるよ?」 「あっちのどすはだれー?」 群れのゆっくりは混乱しているようだった。一度に二匹のドス級を見ることなど、普通ありえない事態だからだ。 「みんな、落ち着いてね! 今から事情を説明するよ!」 老ドスまりさが声を張り、盛り土の上に乗った。 「突然だけど、私は今日で群れのリーダーを引退するよ!」 「「「「「「「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」 群れは大混乱に陥った。 あまりに突然すぎる話であったし、今日まで老ドスまりさがいたから群れは存続できていたのだ。 このままじゃゆっくりできなくなってしまう、と群れのゆっくり達は総じて思った。 「でも大丈夫だよ! ゆっくり聞いてね!」 老ドスまりさはそう言って一歩引き、若ドス魔理沙に前に出るよう促した。 「今日からは、こっちのドスまりさがみんなのリーダーになってくれるよ! 私の代わりに、今日からはこっちのドスまりさをドスって呼んでね!」 老ドスまりさがそう言うと、混乱は収まったものの、しかしまだ困惑顔のゆっくりも多い。 それが若ドスまりさには不満であった。 (せっかくまりささまがりーだーになってやるっていうのに、なんのふまんがあるんだぜ!!) それを察したかのように、老ドスまりさが若ドスまりさに言う。 「さっ、まりさ、みんなに襲名披露演説をしてね!!」 「ゆっ? しゅーめーひろーえんぜつ?」 聞きなれない言葉に首をかしげる若ドスまりさに、老ドスまりさは頷く。 「そうだよ! 今日からまりさが群れのリーダーになるんだから、その前にみんなの前でリーダーとしての意気込みを語るんだよ! ここでみんなの気持ちをぐっと掴むことができれば、まりさの地位は磐石のものになるよ!!!」 「ゆゆゆっ、そういうことならまかせるんだぜ!!!」 言葉の意味はさっぱりだったが、若ドスまりさはニュアンスでそれとなく理解した。 要するに、自分がいかに頼れるか、強いかを群れの皆に教えてやればいいのだ。 「ゆっ、そういうわけで、きょうからむれのりーだーをすることになった、どすまりさなんだぜ!!!」 若ドスまりさは、老ドスまりさよりもさらに大きな声で自己紹介を行った。 それだけで、群れのゆっくりの殆どは若ドスまりさに好感を持った。 元気だし、活力に満ち溢れているし、何より若々しくて頼りがいがありそうだった。 ……実際は新しいものを目にしたときの錯覚も多分に含まれている認識だが。 「まりさは、むれのみんなにいままでいじょうのゆっくりをあたえることをやくそくするぜ!!! こっちのどすなんかよりもっともっとだぜ!!! にんげんだってやっつけちゃうんだぜ!!!」 「「「「「「「ゆゆーーーーーーーーーーー♪♪♪」」」」」」」 頼もしい若ドスまりさの言葉に、群れはいっせいに色めきたった。 群れが新しいリーダーを認めたという証拠である。 「おめでとう、まりさ! これでまりさが群れの新しいリーダーだよ!」 「ゆへへ、てれるんだぜ!」 笑顔の老ドスまりさに褒められて、若ドスまりさはとても気分が良かった。 ああ、なんと自分は幸運なんだろう。労せずしてこれほどの規模の群れのリーダーになれるとは。 老ドスまりさが、再び皆に向き直る。 「それじゃあ、私が預かっているリボンをみんなに返すから、新しいリーダーに結び直してあげてね! それが終わったら、私は群れを新しいリーダーに任せて、ここを出ていくよ!」 「「「「「「「ゆっくりりかいしたよ!!!!!」」」」」」」 後ろを向いた老ドスまりさに、群れのゆっくりが一列に並んで飛びついていく。 そして自分の分のリボンを取ると、若ドスまりさの髪に結わえ付けていった。 一時間ほどして、ようやくゆっくりがそれぞれ元の位置に戻った。 「ゆゆゆっ?」 ここで若ドスまりさが声を上げる。 てっきり全てのゆっくりがリボンを付け替えてくれたと思ったが、老ドスまりさの頭にはまだいくつかのリボンが残っていた。 そして、どうやらそのリボンの持ち主と思しきゆっくり達が、老ドスまりさの近くに並んでいる。 残っているのは、れいむ一家、まりさ一家、それにありすとぱちゅりーと子れいむが一匹ずつだ。 「ゆっ! ぱちゅりー、これはどういうことなんだぜ! せつめいをようきゅうするんだぜ!」 全てのゆっくりが自分に従っていないと気づいた若ドスまりさは、容易く激昂した。 ここでぱちゅりーが迂闊な答えを返せば、すぐにでも潰さんばかりの勢いである。 しかしぱちゅりーは落ち着いて答えた。 「むきゅ、わたしとありすはこっちのどすの『そっきん』だから、どすといっしょにたびをするわ。 こっちのこどものれいむは、ありすがそだててるこだから、いっしょにつれていくの」 「まりさ! 自分の側近を選ぶのが、群れのリーダーの最初の仕事だよ! まりさも自分の群れの中から、自分に合った側近を探し出してね!」 「ゆっ、そういうことならまぁいいんだぜ」 老ドスまりさにそう言われ、若ドスまりさは納得した。確かにこれだけのゆっくりがいるのだから選り取り見取りであろう。 「そっちのれいむとまりさのかぞくはどうするんだぜ?」 「れいむたちは、こどもがおおきくなってきたから、あたらしいおうちをさがすたびにでるよ!」 「ごはんとおうちはそのままにしておくから、みんなでなかよくわけてね!」 それぞれの家長である母れいむと母まりさが言う。 「そういうことならしかたなくもないんだぜ! わかったからさっさとみんなでていくんだぜ!」 リボンを得たことで、若ドスまりさは既に万軍、いやさ饅軍の長になったかのようなふてぶてしい態度を隠さなかった。 ここに虐待お兄さんがいればモウガマンデキナくなってその拳を振るうところであろうが、老ドスまりさはなおも温和だった。 「そんなこといわないでね! 私に元リーダーとしての最後の仕事をさせてね! 私の巣に、緊急用の備蓄食糧があるから、それをドスのお祝いに使おうと思うよ!」 「ゆゆっ、それはいいあいでぃあなんだぜ! さっさとその『きんきゅうようのびちくしょくりょう』とやらをもってくるんだぜ!」 「わかったよ! それじゃあ持ってくるから、リーダーはそこでゆっくりしていってね!」 恵比須顔のまま老ドスまりさは自分の巣に跳ねていった。 しばらくして戻ってきた老ドスまりさは、口一杯に含んでいた食糧を吐き出す。 「ゆゆゆう! ごちそうがいっぱいなんだぜ!」 「今日は皆でそれを食べて、新しいリーダーをお祝いしてあげてね! それじゃあまりさ達はもう行くよ! ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていくんだぜ!」 老ドスまりさの最後の言葉に振り向きもせず若ドスまりさは答え、目の前の食糧に突進していった。 他のゆっくりも食糧に齧りつき、思い思いに口に収めていく。 「…………」 老ドスまりさはそれを一瞥すると、ぱちゅりー達と一緒に旅立っていった。 明けて朝。 「ゆゆんっ、ちょっときのうはたべすぎちゃったんだぜ!」 老ドスまりさの住処をそのまま我が物とした若ドスまりさ──いや、もう区別する必要もないのでドスまりさと呼ぼう。 ドスまりさは食糧庫を見て溜息をついた。 昨日はちょっと羽目を外しすぎたようだ。食糧庫の中には、昨日食べた量の半分程度しか餌がない。これでは今後が少々不安だ。 「れいむー! れいむ、はやくくるんだぜー!」 ドスまりさは側近のれいむを呼んだ。 「ゆ! どす、なんのよう?」 このれいむ、頭の出来は普通だが中々の美ゆっくりであり、ドスまりさは昨日の歓迎パーティで一目見たときから気に入っていた。 そのため即日自分の側近とすることに決め、こうして巣の中で一緒に暮らしていた。 「ごはんのりょうがこころもとないから、ちょうたつにいこうとおもうんだぜ。 このあたりでたくさんごはんがありそうなところをしっていたら、おしえてほしいんだぜ」 「ゆゆ! それならひがしにゆうかのはたけがあるよ! あのゆうかったら、きれいなおはなやおいしいくだものをひとりじめして、れいむたちにはわけてくれないんだよ!」 れいむはぷんぷん怒りながら言う。 「それならさっさとうばっちゃえばよかったんだぜ! なんでそうしなかったんだぜ!」 「だって、ゆうかをいじめるとまえのどすがうるさかったんだよ! れいむたちがいじめると、いっつもゆうかにあやまってたよ!」 「なんておくびょうなどすなんだぜ! あんなやつこのむれからおいだしてせいかいだったんだぜ!」 どうやらドスまりさの中では、『前の臆病で弱いドスまりさを自分の力で追い出した』ということになっているらしい。 「でもまりささまはそんなよわいどすとはちがうんだぜ! れいむ! みんなをあつめてくるんだぜ! ゆうかりんのはたけを、まるごとまりささまたちのものにしちゃうんだぜ!」 「ゆーん! かっこいいよ、どす! さっそくみんなをよんでくるよ!」 ドスまりさの呼びかけに応じ、群れのゆっくりの大半が集まった。 「それじゃあさっそくえんせいにいくんだぜ」 「「「「「「「ゆーーーー!!!!!」」」」」」」 気勢を上げるゆっくり達の軍勢は、森を抜け、程なく開けた場所についた。ゆうかの花畑である。 視界一杯に花々が咲き乱れ、とてもゆっくりできそうな場所だったが、しかし今、そこに主の姿はない。 「ゆゆっ? ゆうかがいないよ?」 「つごうがいいんだぜ! いまのうちにみんなでぜんぶいただいてしまうんだぜ!」 「「「「「「「ゆっくりいただいていくよ!!!!!」」」」」」」 ゆっくり達は、それぞれが思い思いに花畑の中でゆっくりし始める。 むーしゃむーしゃするもの、ごろごろと転がるもの、家に持ち帰ろうと集めるもの。 ドスまりさは花を食べたり集めたりしながら、ときどき周囲の森に横目を向けた。 どこからかゆうかが見ていたら、それに喧嘩を売ろうという魂胆である。 怒りに駆られでてきたゆうかを皆の前で叩き潰せば、皆の尊敬の眼差しはより強いものになるだろう。 しかし結局、ドスまりさが食事を終えてもゆうかは出てこなかった。 「ちっ、つまんないんだぜ! せっかくゆうかをいじめられるとおもったのに!」 「ゆー、しかたないよ、どす! きっとどすのつよさにおそれをなしてにげちゃったんだよ!」 「おくびょうなやつなんだぜ! ゆぇーっへっへっへっへ!!!」 「「「「「「「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!!!」」」」」」」 ゆっくり達は大笑いすると、既にぼろぼろになった花畑を自分達の縄張りにすることを決め、群れに戻っていった。 午後からは、西にいるというめーりん一家のところに行ってみることにした。 「ゆゆっ! くずめーりんがいないよ!」 「おいっ、くずめーりん! さっさとでてくるんだぜ! またいじめてやるんだぜ!」 ゆっくり達は口々に、めーりん一家の住処である古木のうろに向かって叫び続けるが、出てくる気配はない。 ドスからめーりんを虐めることを厳禁されていたこともあって、ゆっくり達のめーりん一家への憎悪は並々ならぬものがあった。 「ゆっゆっゆ、まぁまぁみんな、そんなにあせることはないんだぜ」 いかにも大物らしく身体をゆすり、ドスまりさは笑う。 「どうせめーりんも、このまりささまのきょうだいさにおそれをなし、すがたをかくしているにちがいないんだぜ。 だからいまはみのがしておいてやるんだぜ。そのかわりいつかみつけだして、そのときはじっくりいたぶってやるんだぜ。 せいぜいのこりみじかいじんせいをたのしむがいいんだぜ」 「むきゅん! さすがどすらしい、かんだいなおこころだわ!」 「めーりんもいのちびろいできて、どすにかんしゃしてるはずなんだぜ!」 「ゆぇっへっへっへ!!! そうだぜ、まりささまはやさしいんだぜ!!!」 笑いながら、ゆっくり達は元来た道を戻っていった。 さて。 戻ってきたはいいが、結局あまり食糧は集まらなかった。 朝に比べればそこそこの量にはなったが、しかしこれではすぐになくなってしまうという予感がドスまりさにはあった。 昨日食べたほどの量をなんとか恒常的に確保したい、というのがドスの願いである。 一度贅沢を覚えてしまうと、多少のものでは満足できなくなってしまうものだ。 「しかたないよどす! きょうのところはがまんして、あしたまたたくさんあつめようね!」 にこにこ顔で側近れいむが言う。その美しい笑顔に思わず見とれてしまうが、しかしやはり食糧は欲しかった。 何か名案はないものか、とドスまりさは考え、そしてぴんと思いついた。 「そうだぜ! にんげんのたべものをうばってしまえばいいんだぜ!」 「ゆゆゆ!」 側近れいむが色を喪う。 「にんげんはだめだよ! ゆっくりできなくなっちゃうよ! むれのなかまも、なんにんもにんげんのところにいってもどってきてないんだよ! まえのどすも、にんげんにだけはちかづいちゃいけないっていってたよ!」 だがドスまりさは気にした風もなく、力強く言った。 「だいじょうぶなんだぜ! まりささまはまえのよわっちいどすとはちがうんだぜ! にんげんなんてちょちょいのちょいなんだぜ! しんじるんだぜ!」 バチン、とれいむに向けて含みを持たせたウインクをする。キモイ。 「ゆゆん……! かっこいいよぉ、どすぅ……!」 その勇ましい顔に、れいむは瞳を潤ませる。キモイ。 「それじゃあ、まりささまはこれからにんげんのところにいってくるんだぜ! れいむたちはみんなといっしょにまりささまのかえりをまってるんだぜ!」 「ゆっくりまってるよ!」 れいむの見送りを受け、ドスまりさは森の中を跳ねていった。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ……」 そうしながら、ドスまりさは思考する。 さっきはついあんなことを言ってしまったが、ドスまりさとてそう簡単に人間から食糧を得られるとは思っていなかった。 しかし、それほど難しいとも思っていなかった。 何しろ人間の里の近くで、あれだけの群れが維持されてきたのだ。恐らく、老ドスまりさと人間達の関係は良好であったに違いない。 なら自分が新しいドスを襲名したと言えば、昨日の老ドスまりさのように、お祝いとしてある程度の食糧は用意してくれるだろう。 いや、そうでなければならない。このつよいまりささまに、にんげんはしたがうべきなのだ。 従わなくても、こちらにはドスパークがある。その威力は実証済みだ。 人間を見たことはなかったが、話に聞いた限りでは、それほど強いものだとも思えなかった。 「ゆっへっへ、このよのすべてはまりささまのものなんだぜ……!」 そう意気込みながら、ドスまりさは森を下っていった。 そして開けた場所に出る。地面には規則正しく野菜が並び、その真ん中で直立した細長い生き物がどすまりさを見ていた。 あれが多分人間なのだろう、とドスまりさは思った。思っていたよりもずっと弱そうである。これなら労せずして食糧を得られるに違いない。 とりあえず、ドスまりさはゆっくりのリーダーとして挨拶をすることにした。 「ゆっ、おじさん、まりささまは「ドスまりさが来たぞーーーーーーーーーーーーー!!!!!」ゆゆゆっ??」 ドスまりさの言葉を最後まで聞かず、人間は後ろを振り返って大きな声で叫んだ。 何事かとドスまりさが思っていると、遠くから両手を上に上げた人間達が、大きな声を上げながらこっちに走ってくる。 (ゆゆっ、みんなでまりささまのりーだーしゅうめいをおいわいしてくれてるんだぜ!) そう思ったまりさは、まず人間達を落ち着かせようと声を発した。 「あわてなくていいんだぜ! まずひとりずつならんで、それからまりささまにごはんを「死ねこの化け饅頭が!!!」ゆびゃえっ!!??」 人間の一人が振り下ろした大木槌が、ドスまりさの額にめり込んだ。 「とうとう来やがったな、クソ饅頭ッ!!」 「オラァッ、潰れろッ!!」 「やっぱり餡子脳じゃ『協定』のことは忘れちまったようだなぁ!!!」 何も言わないうちに、ドスまりさは複数の屈強な男達からタコ殴りにされた。 「ゆびぇっ、ゆげべっ、べぇえええ!! やべでえええええ!!」 ドスまりさは突然の事態についていけなかった。 身体が大きく、ドスパークを使えようとも、このドスまりさには経験が足りなかった。 しかも痛みらしい痛みも知らずに育ったため、最初の一撃ですっかり闘志を折られてしまっていたのである。 「うるせぇっ! 約束も守らねぇゆっくりにかける情けなんかねぇんだよっ!!!」 「折角、最後の頼みだって言うから聞いてやったってのに! 甘さを見せた結果がこれだよ!!!」 「じらないぃぃぃ!!! やぐぞぐなんでじらないんだぜえええ!!!」 「しらばっくれるんじゃねぇ!!!」 「げびっ!!!」 ドスまりさの口から、大量の餡子が吐き出された。 ……実は、前リーダーである老ドスまりさは、人間達と『絶対不可侵協定』なるものを結んでいた。 その内容とは、ゆっくりが人間の里に一歩でも入った場合、その後の進退にドスまりさは関与しないというものであった。 ドスまりさの威光を笠に着たゆっくり達の度重なる襲撃に業を煮やした人間達が、老ドスまりさに突きつけた最後通牒であった。 もしドスまりさが罪を犯したゆっくりを庇い立てするなら、いかなる犠牲を払おうとドスまりさを討伐するとまで宣言して、である。 老ドスまりさは、すんなりとこれを呑んだ。 老ドスまりさとしても、正直なところ人間に迷惑をかけるゆっくりの扱いには頭を痛めていたのだ。 注意しておいたのに、それに従わないゆっくりにかける情けはない、と老ドスまりさも決断したのである。 しかし今のドスまりさ──若ドスまりさはそれを知らなかった。 当然だ。老ドスまりさがそれを教えなかったのだから。 いや、教えずとも、れいむを通して注意は喚起されていた。だがドスまりさは、それを無視した。 リーダーが変わろうと協定はいまだ有効であり──その範囲には、当然ドスまりさも含まれていた。 「ぢがうぅぅぅう!! まりざざまはどずなんがじゃないんだぜええええ!!」 ようやく殴られる理由を理解したドスまりさは、必死に主張した。 ドスまりさからしてみれば、自分の知らないところで交わされた約束で撲殺されようとしているのだからたまったものではない。 「嘘つくんじゃねぇ! そんなに髪にビラビラとリボンつけたゆっくりが、他にどこにいるってんだよ!!!」 「今更言い逃れしようなんざふてぇ野郎だ!!!」 だが人間達にとっては、その言葉は通用しなかった。 当然である。普通の人間に、ゆっくりの顔の区別はつかない。ましてや、ほとんど姿を見せないドスまりさである。 人間達にとって、『人間より大きく髪の毛にたくさんリボンをつけているゆっくり』が、即ちドスまりさなのだ。 「オラァ! さっさと逝けやデカブツがぁあ!」 「ゆがばぁあああああ!!!」 人間達が、木槌で、木刀で、もしくは石で、ドスまりさを滅多打ちにしていく。その度に、ドスまりさは口から餡子を吐き出していった。 そんな折、ドスまりさの帽子からぽろりと大きなキノコが落ちてきた。 (ゆ……!) そこに、ドスまりさは希望を見出した。落ちてきたのは、ドスパーク用の魔法のキノコであったからだ。 必殺のドスパークを使えば、こんな人間達など一発で消し飛ばせる。そう思い必死に舌を伸ばして、 「させねぇよ馬鹿!」 「ゆんびぇっ!!!???」 キノコを蹴り飛ばされた挙句、伸ばした舌を踏みつけられた。最後の希望を絶たれたドスまりさは、両目から目幅大の涙を流した。 もっともチャージタイムのかかるドスパークでは、撃つ前に阻止されていただろうが、ドスまりさはそんなことにも気づかなかった。 舌を踏みつけた男が、チッ、と忌々しげに舌打ちをする。 「こうなった以上、群れも放置しておくわけにゃいかねぇな。おい又八、他の男衆連れて森のゆっくり片付けろや。加工所にも応援呼んどけ」 「おうよ」 「どっ……どぉじでええええええ!!!??? まりざのむれになにずるのぉおおおおおおお!!!???」 男の一人が唾を吐き捨てた。 「ほれ見ろ。やっぱこいつ覚えちゃいねぇ。自分から言い出しやがったくせに」 「ドスっていうくらいだからちったぁマシな気もしたが、そんなことはなかったぜ!」 かつて老ドスまりさが人間と結んだ協定には、もう一つの要素があった。 もしドスまりさ自ら人間の里に侵入した場合は、群れ全体を殲滅して良いという内容だった。 これは老ドスまりさが人間への誠意の証として自ら提案したものであり、それを受け、人間も人里に入ったゆっくり以外には手を出さないと決めたのだ。 勿論、このドスまりさはそんなことは知らない。 「じらないいいいいい!!! まりざはぞんなやぐぞぐじでないいいいいいい!!!」 「ああうっせぇ。おい、さっさと黙らせようや」 「おうよ」 それからドスまりさは男達からしこたま殴られ、餡子をきっかり半分吐き出させられると、リヤカーに乗せられ、縄で縛り付けられた。 「ゆ……が……が……」 息も絶え絶えなドスまりさは、男達の手によって、森の奥まで運ばれていく。 そしてある地点に辿り着くと、男はリヤカーを傾け、その光景をドスまりさに見せ付けた。 「……ああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 ドスまりさは叫んだ。 あたり一面に広がる餡子の海が、一体なんであるのかを理解した。 生き残っているゆっくり達は、その全てが人間の持つ網の中に詰め込まれていた。 「むれがあああああああ、まりざのむれがあああああああああああ!!!」 「うるせぇ!」 「ぐぎぇっ!」 男の拳が、傷だらけになった顔面を殴りつける。 「うわああああああん!」 「ゆっくりできないよぉおぉぉぉぉ!」 「どすぅぅぅぅ! たすけてぇえええええ!!!」 数匹のゆっくりが、人間の手を逃れてドスまりさのほうへ向かってくる。 「まーだいやがったか」 近くにいた人間が、それを足で一匹ずつ踏み潰していく。 「ゆぎぇっ!」 「おねーじゃああああわびゅっ!」 「どうじでええええ! なんでだずげでぐれないのどずううううう!!!」 「ああ、ああああ……」 ゆっくり達は、ドスまりさに助けを求めながら、ドスまりさの前で朽ち果てていった。 その中には、あのれいむもいた。 「れいぶぅぅぅぅぅぅ!!!」 れいむは後ろ半分を踏み潰されていたが、まだ息はあった。美しい髪も半分以上が喪われ、見る影もない。 「じっがりずるんだぜっ! れいぶ、じんじゃだめなんだぜええええええ!!!」 どう見ても助からない傷だったが、ドスまりさは叫んだ。叫ばずにはいられなかった。 尋常ならざるドスまりさの様子に、男達はれいむにトドメを刺すのを待ってやった。 れいむは、自分に赦された最後の力を振り絞って、ドスまりさへの別れの言葉を呟いた。 「……どずの、ぜいだ……」 「ゆゆっ!?」 「どずが……にんげんだぢに……でをだじだりなんがずるがらだ……」 「どぉしてぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉ!!??」 「うるざいッ!!!」 死に体だとは思えぬ大喝に、ドスまりさは竦んだ。 「うぞづぎっ、うぞづぎっ、にんげんなんがに、がでるなんで、どうじでぞんなうぞづいだのぉぉ……。 おまえみだいなぐぞまりざ、どずでもなんでもないよ……!」 「ぢがっ、ぢがうううう!!! まりざざまはほんどにづよいんだぜぇええええ!!! ほんどなんだぜえええ!!!」 だがれいむには、もう答える気力も残されていなかった。 話が終わったと見て、男はれいむを踏み潰すために足を振り上げた。 「ゆっくり……しね……」 それを最期の言葉として、れいむは飛び散った。 ドスまりさは、自分の群れの崩壊を最後まで見せ付けられた。 そしてそのまま、森の中に放置された。 続く? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1668.html
ゆっくり伝 その男の姿は、奇妙に森に溶け込んでいた。 着ているものや肌の色を木々に紛れるようにしている、というわけではない。 身に纏う空気といおうか、そのようなものが森と調和しているようであった。 風雨に打たれて育った樫のような、荒々しくもどこか落ち着いた雰囲気の男であった。 そのような男であったから、この生物も無警戒に近寄っていったのかもしれなかった。 体高30cm。 自慢げな表情を浮かべている。 髪形や身に付けているものは何処となく博霊の巫女に似ている。 ゆっくり霊夢であった。 「ゆっくりしていってね!」 男の前にその不思議な生物はたたずんでいた。 豊かな山林である。 人に出会うことは少ないが、動物ならば珍しくもない。 時として妖怪が出るらしいと、そう噂されているのを聞いたこともある。 しかし今現れたこれは、動物とも妖怪とも言い切れない、なにやら不思議な雰囲気を漂わせていた。 男が、ぎろりとゆっくりを見た。 ――なんだ、こいつは。 そう言いたげであった。 「おにいさん、ゆっくりしていってね!」 ゆっくりがもう一度言った。 その表情は天真爛漫であった。 自分に危害を加えるものがあるなどとは考えたことがないかのようであった。 むずりと、男が左手でゆっくりを掴んだ。 軽々と顔の高さにまで持ち上げる。 「ゆゆっ!たかい!たかいよ!ゆっくりおろしてね!」 ゆっくりが少し慌てたような声を上げた。 その純真そうな瞳を見ていると、男の肉の裡に、凶暴なものが膨れ上がってきた。 きりきりと、男の唇が獰猛な形に吊り上がる。 たまらなかった。 ゆっくりというものには、妙に嗜虐心をそそるところがある。 外見は可愛らしく、人間に危害を加えるようなこともない。 それでいて、何故か虐めずにはいられないのであった。 「口を、大きく開けてくれないか――」 男がかすれた声を吐き出した。 「あーーん」 ゆっくりが、言われた通りに大きく口を開いた。 その瞬間であった。 「じゃっ」 男が鋭い呼気を吐いた。 男のごつい右手がゆっくりの口に深々と埋まっていた。 ゆっくりの口の中に、無造作に右手を突き入れたのである。 「ゆあっ!?」 ゆっくりが驚愕の叫び声を上げた。 口の中でうごめいていた男の右手が、ゆっくりの舌を掴んだ。 びくりと、ゆっくりの肉体が震えた。 「これから、俺がどうすると思う」 刃物をなで上げるように、男が囁いた。 「ゆぁ!ゆっ、ゆあぁぁあぁぁ!」 ゆっくりが叫び声で答えた。 目が恐怖に見開かれている。 男は、楽しくてたまらないといった表情を浮かべた。 「このよく動く舌をひきちぎってやるよ」 ゆっくりの顔が一気に青ざめた。 「ゆゆっ!?やえへ、ゆっふりやえへえ!!」 男の唇が喜悦の表情を浮かべた。 両腕に力がこもる。 「ふんっ」 ぶちり、 と、いう嫌な音が小さく響いた。 舌のちぎれる音であった。 男が、右手でゆっくりの舌を、根元から引き抜いたのである。 「ゆ~~~~~~っ!」 一拍おいて、ゆっくりの口から悲鳴が上がった。 耐え難い苦痛に、小さな身体が激しくのたうつ。 男が、右手を引き抜いた。 ちぎられた舌と、舌のかつてあった場所から、餡子が吹き出していた。 男が右手を開くと、分厚い舌がぼとりと地面に落ちた。 まだ痙攣しているそれに向かって、無造作に踵を打ち下ろした。 柔らかいものを踏み潰した感触と共に、靴の下から餡子が勢いよく迸り出た。 ぞくり、と男の背筋を震えが疾り抜けた。 嗜虐者の悦びであった。 拷問官の悦びであった。 ゆっくりの悲鳴は、途切れることなく続いていた。 苦痛の涙を湛えた瞳が、男に向けられた。 救いを求めているような瞳であった。 ぞくり、と先程よりも一層太い震えが男を貫いた。 黒い感情が、肉体を押し破って吹き出しそうになる。 男は震えをこらえて、左手の親指をゆっくりの下顎に、右手の親指を上顎にかけた。 何をされるか悟ったのか、ゆっくりが男の手の中で抵抗するように動いた。 男の唇がめくれ上がり、噛み締めた歯が覗いた。 「むんっ」 男が指に力を込めた。 ゆっくりも口に力を込めたが、男の力に適うわけもない。 大きな口が、たちまち限界まで上下に開かれた。 「ああぁぁぁぁぁ!」 ゆっくりが狂ったように声を上げる。 何とかして男の手から逃れようと、必死に身を捩ろうとする。 構わずに男は力を強めた。 鍛え抜かれた腕に、太い筋肉が浮かび上がった。 みちっ。 みちっ。 音がした。 ゆっくりの頬が、力任せに引き裂かれていく音だ。 無惨に開いた頬から、凄まじい悲鳴が漏れ出してくる。 男は笑みを浮かべた。 鬼の笑みであった。 ことさらゆっくりと、頬の裂ける感触を楽しむように、口を押し開いた。 「あいぃぃぃぃぃぃ!」 ゆっくりは獣のような声を上げていた。 やがて口が頭の半周程度まで裂けてしまうと、あれだけ大きかった悲鳴が小さくなってきた。 ゆっくりの瞳は既に虚ろになっている。 男の表情から、喜びの色が退いていった。 「おうっ」 男が両の親指にありったけの力を込めた。 ぶつり、と不気味な音がした。 ゆっくりが上下に真っ二つになっていた。 大きな瞳が、怨むようにこちらを見据えている。 ふと、男はその頭を齧ってみた。 思わず眉をしかめた。 たまらぬ甘さであった。 決して不味いわけではないが、とても全て食べようという気にはならない。 巨大な饅頭――どうやらこれはそのようなものらしかった。 男は二つの欠片を宙に放り投げた。 それを追うように、ふわりと男の右脚が浮き上がった。 「けえっ」 欠片が空中で重なった瞬間、回し蹴り気味の軌道を描いた脛が、そこに吸い込まれていった。 スピード、タイミング、パワー、どれをとっても申し分のない、会心の一撃であった。 小気味よい音と感触を残して、ゆっくりだったものは木々の間へと消えていった。 男は自分に言い聞かせるように呟いた。 「すっきり――」 いつの間にか、男の口元には再び笑みが浮かんでいた。 沈丁花の香る、春の夕暮れであった。 あとがき 遂にゆっくりの話を書いてしまった。 もしこの作品を読んで、中々やるじゃねえか、と思っていただけたとしたら、 これはもう獏文体好きの冥利に尽きるというものである。 あと一本か二本か、それはわからないが、とにかくネタが尽きるまではこいつを書いてゆくつもりである。 どうか、しばらくお付き合いのほどを。 平成二十年九月二十二日 小田原にて ゆっくり枕獏 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/nenrei/pages/2447.html
【作品名】IKUZE11 【ジャンル】ホモビデオ 【名前】先輩 【属性】イヤミな先輩 ゆうさく 【年齢】15歳と半年 【長所】独特のイントネーションは耳に残る 【短所】俺の乳首…舐めてくれよ 俺のチンコ舐めてくれよ お前のチンポ、ぶち込んでくれよ! 俺のケツマン壊れちまうよ! 【備考】最低でも労働基準法で15歳以上にならないと働けないので、15歳以上 後輩と半年作業しているので計算すると15歳と半年 vol.4
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/966.html
家に帰ると、居間の方から話し声が聞こえて来た。 「ゆ!そろそろうまれそうだよ!」 「ゆっくりしたあかちゃんになりそうだね!」 居間を覗き込んでみると二匹のゆっくりがこちらに背を向けている。 黒い帽子と赤いリボン、まりさ種とれいむ種だろう。 れいむの方は2本ほどツタが生えており、赤ちゃんまりさが1匹に 赤ちゃんれいむが3匹ほどぶら下がっている。 植物型の妊娠は1度に10匹弱〜10数匹は産むのだと思っていたが、 ツタの表面につぼみが落ちたような後が何箇所か付いている。 恐らく外敵にでも追われて必死に逃げたら、ツタを揺らしすぎて 落としてしまったとかそんな所だろうか。 妊娠した母体のゆっくりは安全な巣で出産を待つと言う。 この家に居ると言う事は巣も無いのに妊娠したのだろう、 誠におばかである。 居間に入っていくと、ゆっくりはこちらに気が付いたようだ。 「ゆっ!ここはまりさたちのいえだよ!」 「これからあかちゃんをうむからゆっくりしないででていってね!」 早速腹が立つ事を言ってくれる。 だが本当は自分の家だと教えてもゆっくりは理解しようとしない。 ばかなの?しぬの?と余計な事を言ってくるだけだろう。 部屋が荒らされていないか見回してみるが、さすがに妊娠したつがいでは そう暴れる事も出来なかったのだろう。せいぜい空の酒瓶が倒れて たんすの下の段が開いていたり布団がぐちゃぐちゃになっているくらいである。 いや、布団は元からかもしれない。 「ゆ゛うぅぅ!さっさとででいげぇ!」 さっきからゆっくりの言葉に返事もせず、部屋の状況を確認するのに 夢中になっていたのが気に食わないのかまりさが足を押してくる。 必死になっているが足は全くうごかず、まりさの方が足にめり込んで変形している。 そのまま足で押すように蹴りとばし、れいむの方を向きあぐらをかいて座ると 赤ちゃんに手を出されると思ったのかれいむは少し怯えたように後ずさりする。 すぐに潰したり外に投げ捨てたりするのもいいが、折角だから出産シーンを 見物させてもらおう。 「なにするの?ゆっくりできな…ゆっ!?」 抗議の言葉を投げかけようとしたれいむが頭上の異変に気づき動きを止める。 ツタに生った赤ちゃんのうち1匹がぷるぷると震えだし、その震えが 伝染したかのように他の赤ちゃんも全て震えだした。 先ほど蹴り飛ばして「ゆべっ」と倒れていたまりさも 抗議する事すら忘れて見入っている。 さほど時間がかかることもなく、4匹の赤ちゃんゆっくりは次々と落ちてきた。 すこし地面の上でぷるぷると震えた後、眼をキラキラさせて声を揃える。 「「ゆっくりしていっちぇね!」」 「すごくゆっくりしたあかちゃんだね!」 「ゆっくりしていってね!いっぱいゆっくりしていってね!」 定番の挨拶をした後、ツタを生やしたままのれいむはこちらに向き直り 「かわいいあかちゃんでしょ!げんきにそだつように さっさとごはんをもってきてね!」 とのたまう。さっきは出て行けと言っていたのにもうこれだ。 最初は頭の上のツタを赤ちゃんに食べさせるそうだから、 赤ちゃんをダシに人間から自分のご飯も貰おうと考えているのだろう。 「さっさとしてね!」 「「ごはんちょうだいね!」」 まりさや赤ちゃんも同調する。まりさなどは先ほど蹴られた恨みもあるのだろう。 細目で笑っているのか無表情なのか、非常に憎たらしい表情である。 ごはんといってもな、何かこいつらが食えそうな物などあっただろうか。 食事と聞いてなぜ連想してしまったのか、つい倒れた酒瓶の方に目を向ける。 先の細くなった瓶の口を見て、いたずらを思いついてしまった。 「よし」 つぶやいて、立ち上がらずに酒瓶に手を伸ばす。 よし、と言う返事からご飯をくれると思ったゆっくりは笑顔で跳ねる、 と素早い動きで赤ちゃん4匹はヒョイヒョイと掴まれてしまった。 「ゆ゛っ!?」 「なにするの!?ゆっくりはなしてね!」 急な動きに意表を突かれた親は固まってしまう。 れいむの方はまりさよりも若干だが頭が良いのだろう、 すぐ状況を把握して子供を放すように要求して来た。 その言葉に耳を貸さず、手元で瓶の口と赤ちゃんゆっくりを近づけると、 遊んでもらっていると思ったのか赤ちゃんはキャッキャと喜んでいる。 プチトマトサイズでは瓶の口を通るには少し狭いが、やわらかい饅頭なら 変形すれば大丈夫だろう。 瓶の口に赤ちゃんれいむの顔をあてがい、親指で後頭部をグッグッと押していく。 「ぎゅっ!?ゆ゛っゆ゛っ」 ちょっと小さい口に押し込まれた赤ちゃんは明らかに苦しそうな声を上げる。 その声を聞いた親は異常な事態にパニックを起こしだした。 「な゛にやっでるの゛おぉぉ!」 「はなぜ!さっさどじねぇ!」 れいむはツタをふりふりさせながら足に体当たりし、 好戦的なまりさは腕に飛び掛ってくるが、どちらも全く効き目がない。 「ゆ゛ぶっ!いじゃい゛い!」 変形しながら瓶の口を通り抜けた赤ちゃんれいむは瓶の底まで転がっていき、 少量の餡子を吐き出しながら泣き出した。これならちゃんと通れるな。 残った赤ちゃん3匹も瓶の中に入れてしまう。 先に入った赤ちゃんの悲痛な声を聞いていたゆっくりは 自分の番が来ると目をウルウルさせながら手の中で暴れるが、 れいむ種2匹はさっきと同じ要領で瓶に入れてしまう。 「や゛めで!お゛ねがいだがだやめでーっ!」 親二匹も攻撃が通じないと判ったのか、泣きながら懇願するばかりである。 最後は赤ちゃんまりさの番だが、まりさ種特有の帽子が邪魔になる。 「まりじゃのおぼうぢがぁぁ!」 帽子を取り上げた赤ちゃんまりさを、れいむと同じように瓶の口にあてがい また親指で押し込んだら、帽子だけを後から入れてやる。 「ゆう゛、う゛う゛…」 無理やり変形させられた痛みに涙が出るが、ひらひらと落ちてきた帽子をみると もぞもぞと被りに行く。 ボトルシップはピンセットを使い、瓶の中で部品を組み立てるそうだが これは部品が自分で勝手に帽子を被ってくれるので楽なものである。 これで4匹全員が瓶の中。赤ちゃんゆっくりは決して広いとは言えない 瓶の底面で泣きながらふらふらしている。 「くちゃい!ここなんだかくちゃいよ!」 空になる前は酒が入っていたからなぁ。 親は親で、舌を入れるのも困難そうな瓶の口の細さに 「どうじだらいい゛のお゛!」と叫んでいる。 舌を入れられたとしても、赤ちゃんを強く押して変形させながらで やっと入れられた細さの口である。苦痛を感じる赤ちゃんを無理やり 引っ張り出すなどゆっくりの力ではとても出来ないだろう。 もし頭のいいゆっくりなら割って助けると言う選択も思いつくだろうが、 中に居る赤ちゃんが衝撃に耐えられるか不安な所である。 自分の力では出せないと判った親はこちらに文句を言ってくる。 「はやくあかちゃんをだしてあげてね!」 「ゆっくりできないから、あかちゃんをだしたら ゆっくりしないでしんでね!」 れいむは赤ちゃんにツタを食べさせるタイミングを失ったいる為、 怒ったセリフに合わせてゆさゆさとツタが揺れる。 そう言えば赤ちゃんは租借したえさか、このツタしか食べられないんだったなぁ。 瓶の中の赤ちゃんに目を向けると、腹が減ったのか元気が無さそうにうつむいている。 きつい酒の匂いに気分が悪くなっているのもあるのだろうが。 とりあえず、れいむから生えている2本のツタをつまみ、ぷちっと引き抜く。 「ゆゆ!それはあかちゃんのだからとらないでね!」 と抗議されるがそのまま瓶の中に落として上げると、 赤ちゃんにごはんを上げてくれたのだと判断したのだろう。 「ごはんをあげてくれてありがとう!れいむたちにもごはんをちょうだいね。」 「なんどもはねてつかれたよ、おいしいおかしをもってきてね!」 自分の分までねだって来た。怒ったりねだったり忙しい、 まったくゆっくりしていないゆっくりである。 瓶の中ではさっそく赤ちゃんたちがツタに群がっている。 さすがにツタ2本だけで、瓶の中では餌を租借して渡すのも困難となると 長くもたないのではないか、と考えがよぎり、また思いついてしまった。 無ければ作ればいいのである。 「どうしてだまってるの!?ばかなの?しぬの?」 と癇癪を起こしだす親二匹の後頭部をわっしと掴み持ち上げる。 「ゆ゛!?なにするの、ゆっくりおろしてね!」 「ゆ、ゆへへ、まりさたちはおおきくてびんにははいらないんだぜ! そんなこともわからないなんてばかなんだぜ!」 さっき持ち上げられた赤ちゃんと同じように瓶に入れられると思ったのだろうか、 言われなくても入らない事くらいわかるのに自信満々なまりさの頬と れいむの頬をぐっと押し付けると、ごしごしと揉み洗いをするように2匹の頬を 擦り付ける。無理やりほお擦りをさせる形である。 「ゆっゆっ、いだいよ、やめて!」 力加減が強すぎるのか、痛みを訴えるが無視して摺り続けると 次第に頬の皮が絡みつくようにねっとりとし、二匹の顔も上気しだす。 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ…」 それでも止めずに続ると、声にも艶が出てきて顔全体がじっとりと粘液で覆われる。 突然甘い声を出し始めた親のスキンシップ、赤ちゃんたちは瓶の中からその行為を 息を呑んで見つめる。まだ何をしているのかも判らないのだろうが、 とても気持ちよさそうにしているのは通じるらしく、 となりの赤ちゃんとほお擦りを始めている。 親二匹がいわゆるアヘ顔になってから十数秒も経つと、突然ぺっかー!と笑顔になり 「「すっきりー!」」と叫んだ。これで交尾も終了のはずである。 すっきりの気持ちよさに、目をトロンとさせている二匹を床に下ろすと、 まりさの側頭部からスルスルと2本のツタが伸びだした。 被っている帽子のつばが邪魔になるため、側頭部から帽子の外まで横に伸びた後 若干カーブして上向きに伸びる。2本の角のように見えて、ふとせんとくんと言う 言葉が浮かんだか何の事だか判らないなぁ。 まりさとれいむのつがいだと、れいむが母親になるケースが多いようだが、 確かに大きな帽子を被ったまりさと植物型出産は相性が悪いように見える。 「ゆゆ、まりさおかあさんになっちゃった…」 急に慈愛に満ちたような表情でまりさがしおらしく呟く。 正直まりさらしくないが、母親はこうだ、と言う思い込みがあるのだろう。 そんな事を考えているうちにツタの表面につぼみが出来始めた。 子供を増やしてしまっては意味がないので早速側頭部からツタを引き抜く。 「ゆあっ!まりさのあかじゃんにな゛にずるの!!!」 目を見開いて叫ぶが気にせず、ツタから出来かけのつぼみをちぎり取る。 さっきれいむから引き抜いた、直前まで子供を育てていたツタと比べると 若干細いような気がする。中の管に子供の為の栄養も流し始めていないのだろう。 これでは瓶の中の子供の栄養としては不十分かもしれない、 となれば質より量を求めるしかない。 まりさから抜いたツタも瓶の口から放り込み、またまりさとれいむを掴む。 「ゆっ!もうすっきりしてつかれたからゆっくりさせてね!」 二匹の頬をくっつけ、すっきりするまで擦り付ける。 「ゆっゆっゆっゆっゆっ、やっ、ゆっ、やめてっ、ゆっ…」 … 「ゆ゛っ、すっ、すっきりー!」 恍惚とした表情のゆっくりからスルスルと生えてくるツタを引き抜き、瓶に入れる。 「あがちゃんどらな゛いでぇぇー!」 これを繰り返す。何回も何回も。 気づけば瓶の口からは入りきらなくなったツタが十数本、もっさりとはみ出している。 食事も与えずに何回もすっきりさせられた親はもはや虫の息、と言った感じで 上気させながらもやつれた顔で倒れている。 赤ちゃんも食べる以上に放り込まれるツタが動くスペースを無くし、 何度も何度も親のすっきりを見せ付けられた事もショックだったのか ツタに囲まれながらぶるぶる震えている。 今にも死にそうな親は、ツタが無くなった後に中身の餡子を 子供の餌にすればよい。 今あるツタを食べ終わる頃には、赤ちゃんもみんな体が大きくなって 瓶の中では窮屈になるだろう。その時この4匹が親の餡子を奪い合って どんな醜態を見せてくれるかと思うと今から待ち遠しくなる。 おわり。 お帽子の人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/594.html
※こまけえこたぁいいんだよ!(AA略) 「ゆぅ・・・こ、こんどのおちびちゃんはとってもゆっくりできるよ!」 「本当だろうな? もし、ゆっくり出来なかったらまたまりさに酷い目に遭ってもらうぞ?」 「ゆぐっ・・・だ、だいじょうぶだよ! ぜったいにおにーさんもゆっくりできるよ!」 「そう、それじゃあ見せてもらおうか」 胡坐をかき、はるか頭上かられいむを見下ろす男性の前に跳ねてくる1匹の子ありす にっこりと笑みを浮かべて、ぴょんぴょんと跳躍すると元気良く挨拶をした 「ゆっくちちていってね! ありしゅはありしゅよ!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 「おじしゃんはゆっくちできるひと?」 「・・・・・・」 仕草、態度、言動・・・いずれをとってもとてもゆっくりした子ありすで、栄養状態も悪くない 間違いなく自然界では滅多に見かけないほどに良く出来た美ありすだろう しかし、男はこの子ありすをゆっくり出来るものとして評価しなかった 「駄作!!」 「ゆぴぃっ!?」 「ど、どどどどどほぢでえええええ!?」 容赦なく子ありすを叩き潰されたれいむは叫び、ぼろぼろと涙を零す そんな彼女に侮蔑のこもった視線を向けながら手についたカスタードをふき取る男 れいむがようやく泣き止んだ所で、あの子ありすが不適格であった理由を話し始めた 「甘ったれるな、理由は自分で考えろ!」 「ゆぐっ・・・ゆゆっ! や、やめてね! はりさんのよういをしないでね!?」 「断るっ!!」 叫ぶや否や男はウヒヒヒと気味悪い笑みを浮かべつつ、近くに置かれていた透明の箱から1匹のまりさを取り出す 右手で彼女の髪をしっかりと掴み、左手に握られたかなりの長さの針を彼女のこめかみの辺りに容赦なく突き立てた よく見てみるとその針と同じものがすでにまりさの両目に2つずつ、そして下あごに3本ほど刺さっている 「やべでね!やべでね!や、やべでぐだざ・・・ゆっぴぃぃぃいいぃぃぃぃ!!?」 「ま、ま゛でぃざああああああああ!?」 「はい、終了。さて、早く次のガキをこしらえようか?」 餡子を貫かれ、白目を剥いて泡を噴くまりさをすぐに透明の箱に戻した男はそう言って別室へ 一方のれいむはその隙に何とか逃げ出そうと室内を跳ね回るが出口は全て閉ざされており、打つ手なし そうこうしている内に、男が発情したありすを抱えて戻ってきた 「れ、れ・・・れいむううううう! すっきりぢましょおおねえええええ!!」 「ゆああああああ! ありずはゆっぐぢでぎないよ!? ごっぢごないでね!?」 「にげるなんて・・・れいむってばつんでれねええええええ!!」 拒絶の言葉を吐きながら懸命に狭い室内を逃げ回るれいむ しかし、発情したゆっくり、特にありす種にそのような言葉は無意味であるばかりか、かえって彼女の欲望を刺激する それでもれいむは必死に貧困な語彙で彼女を罵りながら長方形の部屋を壁沿いに走り回る 「・・・いい加減飽きたな。れいむ、これ以上逃げたらまりさを刺すぞ」 「ゆゆっ! や、やめでね!! れいむのだー・・・ゆびゅっ!?」 「つかまえたわ、れいむうううう!」 男の言葉に反応してれいむの動きが止まった瞬間、ありすは後ろから彼女の黒い髪に噛み付いて動きを封じた こうなってしまっては手も足もないれいむがありすから逃れる術はない 何せ、接触さえしていれば体中どこででも生殖できてしまうのがゆっくりなのだから 「さて、タバコでも吸うか」 「やぢゃあああああ! だずげでええええええええ! おに゛いいいいざああああああん!?」 「いつも言ってるけど、植物型のにんっしんは却下だからな。ちゃんと胎生で産めよ?」 れいむの叫びもむなしく、男はライターとタバコと、灰皿代わりのまりさを手にベランダに出て行ってしまう こうして室内でありすとふたりっきりになってしまったれいむは、時間をかけてじっくりとすっきりー!させられた もっとも、時間がかかった原因の大半はれいむが中途半端に抵抗しようとするからなのだが 2週間後のある日・・・ れいむは決して広いとは言いがたい水槽の中でため息を吐いていた 事実上の監禁と幾度にも渡る強制すっきりと目の前での子殺し、そして愛するまりさが傷付けられる 食事は栄養価はそれなりにあるらしいが、お世辞にも美味しいとは言いがたいものばかり 身重では運動することもままならず、更には胎教と称して1日の大半歌うことを強要され、夢に逃げるも許されない もしも彼女が人間ならば、とっくの昔に正気など失われていてもおかしくないような状況だった 「ゆっぐ・・・ゆっぐぢぢだいよぉ・・・」 「俺をゆっくりさせられるようなガキを産めば良いんだよ。簡単な話だろう?」 「ゆひぃ・・・ごべんなざいぃ、ごべんねぇ・・・!」 嗚咽を漏らすれいむの傍で男は美味そうにオムライスを食べている それを見ながられいむは思った。自分が人間さんの食べ物を食べたいなんて言わなければ、と そうすれば最初に男に潰されたまりさや自分の子ども達と一緒に山奥でそれなりに平穏な生活を送れたのに 『まりさ! れいむ、にんげんさんのごはんさんがたべたいよ!』 『ゆゆっ!? だ、だめだよっ、れいむ! にんげんさんはゆっくりできないよ!』 『だいじょうぶだよ! とっておきのゆっくりできるさくせんがあるよ!』 結論から言えば、その“ゆっくりできるさくせん”こそ全ての元凶だった 作戦の内容は至って単純で「自分達の子どもを見せる」というもの 1.れいむ達の子どもはとってもゆっくり出来る 2.れいむ達は子どもと居るとゆっくり出来る 3.子どもには誰かをゆっくりさせる魅力がある 4.人間さんも子どもと居ればゆっくり出来る 5.ゆっくり出来れば人間さんと仲良くなれる 6.仲良くなれば人間さんの食べ物を分けて貰える 7.皆がゆっくり出来て、しあわせーになれる 『ゆーっ! すごいよ、れいむ! と~ってもゆっくりできるね!』 『ゆぅ? おかーしゃん、にんげんしゃんってなあに?』 『とってもおおきくてつよくてこわいけど、あまあまをもってるんだよ!』 『ゆっくちー!れーむ、あまあましゃんたべたいよ!』 そんなやり取りの後、意気揚々と無用心な人家に入り込んで男が帰ってくるまでゆっくりしたのが4ヶ月前のことだった もし、家主がまともな人だったなら、空腹のために餌を探して多少室内を荒らしたことを咎めた上で家から追い出されるだけだったろう 運良く、家主が温厚でゆっくりが好きな人物だったなら、首尾よくあまあまを食べる事だって出来たかもしれない が、れいむ達が入った家の主はゆっくりにとって最悪の人格と嗜好の持ち主だった 『へぇ、こいつらでゆっくり出来るねぇ?』 『そ、そうだよ! れいむのおちびちゃんはとってもゆっくりできるよ!』 『だから・・・おじさんのおうちをぐしゃぐしゃしちゃったことはゆるしてほしいよ!』 『おじしゃん! れーむといっしょにあまあましゃんでゆっくちー、しようね!』 『まりしゃあまあましゃんたべたいよ!』 どうやら男は虐待に理屈をつけて自己欺瞞する性分だったらしく、最初のうちはれいむ達と普通に話しをしてくれた だから、れいむ達は室内を荒らしたことに彼が憤っていることを理解し、代償としてゆっくりさせてあげようと考えた その為に子ども達を、とても可愛らしい子れいむと子まりさを男に紹介した しかし、子ども達は状況をいまひとつ理解できておらず、苛立っていた男に向かってあまあまを要求してしまった 『駄作!!』 『ゆびぇっ!?』 『ぴぎゅっ!?』 『『おおぢびぢゃあああああああああん!?』』 どうしてこんなことするの・・・そう叫ぶ2匹に向かって、握りつぶした子ゆっくりの餡子を片付けながら男は言った お前達の子どもがゆっくり出来なかったからだ、と 部屋を荒らしたお詫びにゆっくり出来る子どもを見せてくれるんだよな、と そして・・・ 『約束を守るまで絶対に逃がさないし、約束を破るつもりならここら一帯のゆっくりを全部駆除する』 陰惨な笑みを浮かべる男を前に、2匹は子を殺された憎しみすらも忘れてただ呆然とするしかなかった 数時間後、回想を終えたれいむは急に産気づき、1匹の赤れいむを出産した 自分の餡子を分けた、目が大きくて丸っこいとても可愛らしい自分に良く似た我が子 「ゆぐぅ・・・おぢびぢゃ、ん・・・ゆっぐぢぃー!ゆっぐぢぢでねぇ・・・」 「ゆっくちうまれるよ!・・・ゆっ、ゆっくちちていってね!」 「ゆぅ、ゆっくりしていってね!れいむのおぢびぢゃん・・・す~りす~り」 はつらつとした笑顔、優しい声・・・どれをとってもゆっくりしている この子ならきっと大丈夫だろう、お兄さんもゆっくり出来るはず そう思いながら双眸からあふれる涙をそのままに、産まれたばかりの我が子に熱烈な頬ずりをする 「おかーしゃん、くしゅぐっちゃいよ!」 「おちびちゃん・・・ゆっくりしたこになってね~♪」 頬ずりを終えると、れいむは早速出産時に一緒に漏れた餡子を集め、赤れいむに正しい食事の仕方を教えた 「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」 「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー!」 初めての食事に歓喜の涙を零す赤れいむを見て、このしあわせー!な姿を見ればお兄さんもゆっくり出来ると確信する しかし、たまたま食事を持ってきた男は食事中に喋る無作法な赤れいむめがけて大きな拳を振り下ろした 「駄作!!」 ‐‐‐あとがき‐‐‐ まいたんウザ可愛いよ、まいたん んほおおお、まいたんってばツンデレねえええ! byゆっくりボールマン☆ このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/sinnerei/pages/641.html
【作品名】IKUZE11 【ジャンル】ホモビデオ 【名前】先輩 【属性】イヤミな先輩 ゆうさく 【年齢】15歳と半年 【長所】独特のイントネーションは耳に残る 【短所】俺の乳首…舐めてくれよ 俺のチンコ舐めてくれよ お前のチンポ、ぶち込んでくれよ! 俺のケツマン壊れちまうよ! 【備考】最低でも労働基準法で15歳以上にならないと働けないので、15歳以上 後輩と半年作業しているので計算すると15歳と半年 vol.4
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3481.html
※ゆっくりは余すところ無く食べられる設定で 今子供たちの間で『東方 ゆっくり・(シール付)』というお菓子が大人気になっている。 このお菓子は東方のキャラクターたちのシールが入っている子ゆっくりのお菓子である。 この子ゆっくりは食べられることが至上の喜びであると刷り込まれているため、 袋を開けると「ゆっくりたべてね!」とか「おいしくたべてね!」と逃げ出さずに 食べられるのをじっと待っている。 ちなみに子ゆっくりは全てれいむで大きさはバスボールと同じ。 これがなかなかの売上を誇り、シールの種類もどんどん増えていった。 コンビニから男の子2人と女の子1人がそれぞれそのお菓子を持って出てきた。 子供たちはコンビニの前で輪になって話し出す。 「それじゃあ、みんなで一緒に開けようね!」 「「うん!」」 「「「いっせーのせっ!」」」 3人でお菓子の袋を開ける。中のゆっくりが「ゆっくりたべてね!」と声をかけるが、 気にも留めずにシールを取り出す。 「よっちゃんは何が出た?」 「咲夜だよ、ほんとはレミリアが欲しかったんだけどな~」 「まーくんは?」 「魔理沙だぜー」 「けんちゃんはー?」 「ひ……なんとかてんこ!」 「えーなにそれー」 「だって読めないんだもん」 「じゃあさ、ゆっくりを早く食べちゃおっ!」 袋からゆっくりを取り出す、が女の子がゆっくりを落としてしまった。 泣きそうになる女の子。 「ゆべっ!」 「落っことしちゃった…」 「じゃ僕の半分あげるよ」 そう言うとその子は持っていたゆっくりを頭から半分に割った。 「ゆぎゃあああぁぁぁぁ」 「はいっ」 「あいがとう、まーくん」 落としたれいむは潰れてはいなかった。 子供の手から落ちて、潰れてしまうほどゆっくりはやわではなかった。 「いたいよおぉぉぉぉ!だれかすりすりしてええぇぇぇぇ!」 「食べ終わったことだし、遊びに行こう!」 「ゆっ!?」 それを聞いてれいむは驚いた。だってまだ自分は食べてもらってない。 「うん、行こっ!」 「まってね!れいむをたべてからにしてね!」 れいむが必死に訴えるが子供たちはコンビニから駆けていってしまった。 れいむは追いかけようとするが子ゆっくりでは追いつくのは無理だった。 「れいむはおいしいんだよ!ゆっくりたべていってよおっ!」 コンビに前のアスファルトの上を跳ねていくが遅々として進まなかった。 そしてれいむの足は黒く汚くなってしまった。 「どおじでたべでぐれないのおおおおぉぉぉ!」 皮はどんどんと擦れていき、跳ねることもできなくなって這っていたが、 ついにそれもできなくなってしまった。 「いだいいいぃぃぃぃ!ゆっぐりでぎないぃぃぃぃ!! おがあざんだずげでえげべれげっっ!!!」 れいむはコンビニに駐車する車に轢かれて、汚いシミになってしまった。 ランドセルを背負った男の子が家に帰ってきた。 「ただいまー」 「おかえり」 「お母さん東方ゆっくり買ってきてくれた?」 「そこのテーブルの上に置いてあるわよ」 男の子はお菓子の袋を手に取り、開ける。 ゆっくりが声をかけるが無視し、シールを取り出すがすぐに渋顔になる。 「げぇーまたチルノかよーもう⑨枚目だよー」 そう言いながら男の子は冷蔵庫の中からタッパーを取り出して開ける。 その中にはゆっくりが3匹入っている。 「「「ゆっくりたべていってね!!!」」」 元気に声を出すが男の子は気に留めずに先ほど開けたお菓子のゆっくりを入れる。 そしてタッパーの蓋を閉めて元の位置に入れる。 「れいむをたべてよおおおぉぉぉ!どおしてたべてくれないのおおおぉぉぉ!」 「たべてくれないとゆっくりできないよおおぉぉぉ!!!」 「おなかすいたよおおぉぉぉ!!!」 「れいむをたべてくれないとおこるよ!ぷくぅぅぅ」 そのまま冷蔵庫は閉められた。 「早くゆっくり食べちゃいなさいよ」 「えぇ冷蔵庫に入れたゆっくりっておいしくないんだよ」 「あれ全部食べきるまでもう買ってこないからね」 「いいですよーだ、遊びに行ってきまーす!」 「夕飯までには帰ってくるのよ」 2週間後、冷蔵庫の中から干からびた4匹のゆっくりが入ったタッパーが 出てきてまとめてゴミ箱へ放り込まれた。 終 あとがき もちろん大人買いすると白い目で見られます。 元ネタは皆さんご存知のビッ○リマンチョコ。 じゃあゆっくりだった場合どうなるかなと思ってSSにしてみました。 このSSにあやかって今度から『オマケ』と名乗らせていただきます。 今後ともよろしくお願いします。 さあみんなもレッツ虐待! 今まで書いたSS バカは死んでも ゆっくりを排除せよ 無意味
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1579.html
人間じゃない生き物が主人公です。 そいつの独白とかはありませんが、それでも難点があるでしょう。 「ハチにそんな知能あるのかよwwww」とか「成長はええwwwwww」とか「毒は?wwww」とかですね……。 気になる方は多いと思われます。若干胸を悪くするような描写もあります。 また昆虫嫌いの方にはお勧めいたしません。それでもよろしければ、 色々と見逃しつつお楽しみください。 そのハチは困惑していた。そろそろ産卵しようと決めていたが、 未来の子供達のための、あたたかな寝床を見つけあぐねていたのだ。 ようやくしつこい雨があがって、涼やかな秋の風が吹き始めたため、 『彼女』はようやく、ねぐらを抜け出したのだった。 幻想郷の森にも、多様なハチが生息している。 大きなクマンバチから、猛毒を持つスズメバチまで。 一般にハチの巣というと、見慣れたあの形を思い起こすだろう。 人家や、樹木にぶら下がるようにしてある、球形のアレである。 しかし、このハチの場合は少し違っていた。 壮大な巣を地道につくりあげていくのではなく、 自らより弱い生き物をとらえ、毒を注射し、そこに産卵するのだ。 犠牲者はすなわち、幼虫達の寝床であり、食料でもあるのだった。 神経毒によって麻痺した獲物は、ハチの住処に引き摺りこまれ、 じわじわと、生殺しにされるというわけである。 体長2cmほどの小さなハチではあったが、捕食者としての能力には、 並外れたものがあると言ってよいだろう。 そして、そのハチ――ジガバチは、どこからともなく漏れ聞こえてくる、 ハチにとっても「間抜け」に思われる、珍妙なリズムを感じ取った。 「ゆっゆっゆ~♪ゆっゆゆ ゆっゆ ゆっゆ~♪」 「「「わぁおかあさん、おうたがじょうず!!!」」」 それはどうやら、巷で噂の「ゆっくり」の家族であるらしい。 『彼女』はたぐるようにして、いびつな調べの発生源へと向ってゆく。 あくまで静かなその様子は、まるでステルス戦闘機のようである。 「ゆっ!そろそろおゆうはんのじかんだね! ゆっくりごはんにしようね!!」 「「「ゆっ! おゆうはん!おゆうはん!」」」 『彼女』がたどりついたのは、大樹の根元にかまえられた、ゆっくり一家のねぐらである。 遠巻きに、一家団欒の様子をながめ、家族構成を調べる。 親れいむとまりさが一匹ずつ、子れいむとまりさがそれぞれ三匹ずつ。 計八匹の、中規模のゆっくり家族であることがわかる。 「きょうのごはんは そとにころがってた むしさんだよ! まるまるふとっておいしそうだね! ゆっくりあじわってね!!」 「「「ゆ~っ!おいしそう!!!」」」 「うっめ!これメッチャうっめ!」 「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせ~~~!!」 ゆっくりたちの晩餐がはじまる。あたりかまわず、食いかすをまき散らし、げっぷを連発。 小さな子供たちはまだしも、親である二匹まで、この有様である。しかし。 何より『彼女』の神経を逆撫でしたのは、昆虫にとってもクズに等しい「ゆっくり」どもに、 『彼女』の眷属たる、ハチや、たっぷりミツを湛えたミツアリたちが、既に絶命しているとは言え、 むさぼり食われ、はずかしめられているという事実であった。 にわかに『彼女』の心の中に、「こいつらに産み付ければ一石二鳥」という名案が浮かぶ。 普段狙いをつける動物よりも、その図体は何倍も大きいというリスクこそあったが、 連中は何より、理想的な栄養源たる、餡子のかたまりなのである。 動きは極めて鈍く、昆虫に対する警戒心も果てしなく薄い。思考力も乏しい。 むしろ、いつもより「ゆっくりとした」狩りになるのではないか。 『彼女』は、見苦しい食事を続ける一家の巣穴へ、ふわりと舞い込んでいった。 「ゆっ!? おかあさん、はちさんがはいってきたよ!!」 「ゆゆゆっ、ほんとう!こんなおそくに、まよっちゃったのかな?」 「はちさん、ゆっくりしていってね!!」 『彼女』の侵入に気付いた子まりさが、驚きの叫び声をあげる。 しかしながら、そこはゆっくりブレインである。まずはお決まりの文句をぶつけた。 「ゆぅ~っ、おうちをまちがえてるね!!」 暢気なゆっくりたちは、どうやら揃って満腹したようで、『彼女』を捕らえるつもりはないらしい。 むしろ、一人合点して、心配する素振りをさえ見せ始める。 「はちさん、こんやはまりさたちのおうちでゆっくりしてもいいんだぜ!」 「ゆっ、そうだね!ここはれいむたちのじまんのおうちだからね!!」 「「ゆっ!おきゃくさん!まりさたちのおうちにゆっくりとまっていってね!!」」 一日精一杯ゆっくりして、あたたかい巣に帰り、腹もふくれ、すっかり安心しきっているのだろう。 連中の言葉でいえば、まさしく「ゆっくりしている」状態だった。この状況を『彼女』は冷静に分析する。 「油断しきっているな」と。 「ゆっ、そろそろねるじかんだね!こどもたちはゆっくりおへやにもどってね!」 「ゆ~~っ、もっとはちさんとあそびたいよ!!」 だだをこねる子ゆっくりたち。しかし、遊び疲れた様子で、渋々自室へかえってゆく。 部屋といっても、扉などない、わずかなくぼみに過ぎないものではあった。 「ゆぅぅ~っ、すりすり♪れいむのほっぺはあったかいね!!とてもゆっくりできるよ!!」 「まりさだってとってもゆっくりしてるよ!!いっしょにゆっくりできるね!!」 そんな、あたたかいお部屋のなかで、ほっぺたをすり合わせ、今日一日の楽しかったできごとを反芻する。 こうしたスキンシップや回想も、ゆっくりたちにとって重要な作業なのである。 次第に夜はふけてゆき、まどろみ始めるゆっくり一家。 空高くにきらめく星たちが、一層輝きを増す頃、一家は完全なるノンレム睡眠のさなかにあった。 そして、狩人の時間が代わりに訪れる。積まれた枯れ枝の陰に息を潜めていた『彼女』が、静かに舞い上がる。 翌朝。小鳥たちの騒ぐ声で、いつものように、一番最初に目覚めたのは、母れいむだった。 数日前の悪天候もどこへやら、外はすっかり、爽やかな秋のムードに包まれているようだ。 ――だが。同時に母れいむは、自らの後頭部(?)に、言いようのない異物感をも感じていた。 「ゆっ!みんな、ゆっくりおきてね!きょうもはれたから、ぴくにっくにいくよ!!」 「…ゆぅ~っ」 「…ゆっ!ぴくにっく!」 「ゆゆっ、まだゆっくりねてたいよ…」 奇妙な感覚を忘れ去ろうとするかのように、母れいむは夫と子供たちを起こしにかかる。 その反応は様々だったが、「ぴくにっく」という、とてもゆっくりした単語を耳にし、むくり、むくりと起きはじめる。 母れいむが、夢心地の子供たちを引率し、おうちの外に連れ出していく。 しかし、「おへや」の隅にむこうを向いて寝転がったまま、ぴくりとも動かない、末っ子れいむに気付く。 「ゆっ?れいむ、どうしたの?ゆっくりおきてね!おいていっちゃうよ!!」 親まりさの呼び掛けにも、微動だにせず、眠りこける子れいむ。その後も、親の呼び掛けは続いたが、 一向に目覚める気配がない。痺れを切らせた親まりさが、子れいむに近付き、リボンをぐいぐいとひっぱり始めた。 「ふぇいふ!ふゃっふゃひょほひはいほほいへふほ!(れいむ!さっさとおきないとおいてくよ!) 親まりさが子れいむのリボンを引っ張った為、自然、ぐるりと体の向きが入れ替わる。 しあわせな夢を見て、実にゆっくりとした表情で眠っているのであろう。 いくばくかの微笑みを湛えて、わが子の安らかな寝顔を想像していた親まりさ。――しかし。 「れいむ、はやくおきな―――ゆ゛っっ゛!?れいむ゛?れ゛いぶっっ!??」 ごろん、と、力なく転がり、こちらを向いた子れいむの表情は、「安らかさ」とはかけ離れたものだった。 白目をむき、その目を見開き、歯茎をむきだしにしつつ、歯を食いしばっている。 よく見れば、その歯と歯のすきまからは、餡子色をした泡をさえ吹き出し、にじませているではないか。 いくら知能が低く、状況を認識・把握する能力を欠いたゆっくりでさえ、この、常識外れの苦しみを味わい尽くし、 地獄の大鍋の鍋底をさえ舐め尽したとでもいうような、苦悶の表情をうかべるわが子の様子からは、 異変を感じ取らざるを得なかった。 「でい゛ぶ!!!でい゛ぶぅぅぅぅっ゛!!!どぼぢだの゛おぉぉぉおっっっ゛!!!べんじじでよ゛ぼぉぉぉ゛っっ゛!!」 巣穴の奥からの、けたたましい悲鳴に驚いたのは、ピクニックの準備をすませ、 おうちの前で、ゆっくりと母と姉妹を待っていた、残りのゆっくり家族たちだった。 「ゆっ!?おかあさんのこえだよ!!」 「ゆぅっ、ふつうのこえじゃないよ!!なにかあったの!?」 にわかに、騒ぎ始める子ゆっくりたち。それを制する母れいむ。 「ゆっ、みんな、おかあさんはなかのようすをみてくるよ!おうちのいりぐちで、ゆっくりじっとしててね!!」 「「「ゆっくりみてきてね!!!」」」 いったい、何があったというのだろう。まりさは普段、とても温厚で、声を荒げたことなど一度もなかった。 「これからもずっと、ゆっくりとして生きていきたい」という思いに、影を落とすような不安を振り払うかのように、 母れいむは懸命に跳ね飛び、大きな、立派なおうちの奥、こどもべやを目指して駆けた。 そこで繰り広げられていたのは、想像を絶する惨状だった。 大切な、大切な子供たちの、ちょっと手狭で、寄り集まってゆっくりするには最高のおへやのなかでは、 同じくらい大切な、配偶者のまりさが、見たこともない泣き顔で、喉も裂けよと言わんばかりの声を張り上げ、 わんわん泣いていた。そのかたわらに転がっていたのは、すっかり冷たくなった、わが子の亡き骸であった。 見れば、尋常ではない表情を浮かべているではないか。急速に、母れいむのゆっくりブレインに、 「泣きわめきたい」という衝動がわきあがってくるが、家族のためを思い、必死にそれを制する。 「ばり゛ざ!!どう゛じだの゛!どう゛じでれい゛むのこどもがじんじゃったの!!!ゆ゛っぐり゛せつめ゛いじでね!!!」 「ゆっ…ゆ゛っ…ば…ばがら゛な゛びよおお゛ぉほぉぉっ!!!!い゛づまでもねてるから゛、ゆっぐりおごじだだげなぼびぃぃいっ!!!」 駄目だ、とても会話ができる状況ではない。母れいむは、こみ上げる涙に潤んだ瞳で、わが子を見つめる。 つい昨日までは、みんなで仲良く飛び跳ねて、とてもゆっくりと暮らしていたはずだったのに。どうして。どうして。 母れいむの頭のなかにぎっしり詰まった餡子の分だけ、この末っ子との思い出も詰まっている。 ゆっくりという種族は、記憶力が乏しいとは言え、家族間の絆は、極めて強固なのである。 母れいむの餡子脳が、楽しかった思い出を求めて、ぐるぐると回り始める。どうして。どうして…! 「ゆ゛うぅ゛っ……!!…………ゆ゛っ??」 泣きわめいていた母まりさが、しゃくり上げると同時に、ぴたりと泣き止んだ。死んでしまったとばかり思っていた、 子れいむの体が、ぴくりぴくり、とうごめきだしたからである。母れいむのほうも、空想に耽るのをやめて、 わが子に駆け寄った。 「れいむ!れいむ!!まだいきてたのね゛!!!よがっだ!!!」 「よ゛がっだあああぁぁあぁ!!でい゛ぶううっっ゛っ!!!」 助かった。子れいむは助かったんだ。二匹の心やさしい親ゆっくりは、ない胸を撫で下ろしたい気持だった。ところが、である。 ぴくぴくと、子れいむは、確かに動いているようである。しかし、おかしいのは、浮かべた苦しみの表情にまるで変化がなく、 自発的に「動いている」というよりは、むしろ誰かに「動かされている」という感じなのだ。訝しげな両親。 「ゆぅぅっ…れいむ、どうしちゃったの……」 もっと近くで、と母まりさが子れいむに近づいた、その時。母まりさは、わが子の皮膚の下でうごめく「何か」を見て取った。 「ゆ゛っ゛っっ!!?」 「ど、どうしたの、まりさ!!!ゆっくりれいむにもみせてね!!」 母れいむが飛び跳ねて、近寄り、うごめく「何か」凝視する。それは―― まさしく、子れいむの中に詰まった、餡子をむさぼるっていた。しきりに、もぞもぞと動いていた。 「ゆっぎゃぎゃああああああ゛あ゛あ゛ああああああああああああ゛ああああ゛!!?」 奇声ともいえる、珍奇な悲鳴を、大音声をあげる両親の目の前で、子れいむは何かに「食われて」いた。 それがいる部分の皮膚が大きく盛り上がって、そこから、音がしそうなほどの勢いで、ベコン、ベコンと、 愛しい娘の餡子が吸い取られ、むさぼられていた。丸々と肥えて、元気なゆっくりに育ちつつあった愛娘は、 見る見るうちに、皮とリボンと、つやのない髪を残して、その存在を消し去られてしまった。 「でい゛ぶの゛ごどぼ!!!!だびじな゛ごども゛があ゛あ゛ああああ゛あ!!がら゛っぼに゛な゛っじゃっだあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「でい゛ぶ!でびぶぶぶっっぽおおおお゛おお゛がががあががががが!!!」 堰を切ったように、両親の目から涙があふれ出した。さながら滝のようである。こどもべやをマイナスイオンが満たしてゆく。 「ゆ゛っぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!でびぶぼごどぼ!!!でびぶのあ゛がじゃ゛ん゛!!!」 「ばびざぼごどぼ!!!!ゆ゛がががああがががが!!!!どぼじでええええぇぇえ!!!」 泣き叫ぶゆっくりたちを尻目に、成果を見届けた『彼女』は子供部屋を後にする。 そう、『彼女』は、油断しきったゆっくりたちが爆睡していた真夜中に、一匹一匹、ゆっくりと、麻酔を注射し、産卵していったのだ。 そうした卵は、遅かれ早かれ、数日と経たぬうち、孵化して、中から獲物を食い破ってゆくのである。 今回は、一晩で、一匹だけが犠牲となった。若干のタイムラグは、致し方ない。――そうこうしているうちに。 「おかあさんたちおそいね!ゆっくりしすぎだよ!!」 「ほんとだね!!まりさたちまちくたびれちゃったよ!!」 「…ゆぅっ…ゆぅっ……」 「おうちのいりぐち」で、待ちぼうけを食らっていた子供たち。中には、退屈してしまい、先刻の夢の中へ舞い戻っているものもある。 そんな子ゆっくりたちにも、むろん、分け隔てなく、卵は産み付けられているわけである。現在進行形で、卵は孵化しつつあるのだ。 「おうたでもうたおうね!!!」 「ゆっくりうたおう!!」 「「「ゆ~ゆ~ゆ~♪ゆっゆ~ゆっゆゆっゆ♪」」」 「ゆ~ゆ~……ゆごぺっ!!?」 突如、一匹の子まりさが、ゆっくりの生命にも等しい餡子を、もりもりと吐き戻しはじめた。顔面蒼白、餡子色の涙を流して。 「ゆっ!?お゛ねえぢゃん、あ゛んごはいじぢゃだめ゛えええ゛ぇぇ゛っ゛!!!!」 「ゆぅぅっ!?どうぢだの゛!!!!!????」 「ゆ゛ぎっ!!ごわい゛よ゛おぉぉおおっ゛!!!!」 泣き叫ぶ姉妹をよそに、子まりさは痙攣しながら餡子を吐き出し続ける。僅かだった体内の異物感が、ある瞬間を境目に、 爆発的に膨れ上がる、おぞましい感覚。猛スピードで、体内の餡子を食い荒らされて、ものの数分で、子まりさは息絶えた。 「ゆ゛あ゛っ゛!!ぼね゛い゛ぢゃん゛がじんじゃっだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」 「ゆぐぐっ゛!!!ごわ゛いごわ゛いごわ゛いごわ゛いいいい゛いいい゛!!!」 当然のように姉妹たちは泣き叫ぶが、既に、それぞれの体にも、致命的な変化が起こり始めていた。 「ゆ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!ぼね゛え゛ぢゃ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!…ゆ゛!!ぶっ゛!???」 「ゆぎゃぴゆぴぃ゛ぃゅ゛ぃぃ゛!!!!!ぎゃ゛い゛い゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!…ゆっく ぶびびるっ!!!!??」 「ゆ゛ぴっ!?ぶべるびばぼごぺっっっっっ!!!!!!ぶり゛ゅりゃ゛っ゛!!!!」 「おうちのいりぐち」は、もはや阿鼻地獄、叫喚地獄の様相を呈していた。子ゆっくりたちは皆、餡子を噴き出して、 滝のような涙を流し、思い思いに泣き叫び、両親の名前を呼び続けた。無慈悲に、ジガバチの幼虫たちが、 子ゆっくりたちを食べ尽くし、いりぐちは静まり返っていた。 「ゆ゛っ゛…ゆ゛っ゛…ゆ゛…お゛があ゛ざん、でい゛ぶを゛ゆ゛っぐり゛だずげで…!!!」 虫の息の子れいむが、両親のいるはずの、こどもべやへと這いずっていた。 どうやら、体内の幼虫の数が少なく、致命傷には至っていない様子である。その懸命さは、ゆっくりにあるまじきものだった。 こどもべやについたら、おかあさんたちに、きもちわるい虫を取って貰おう。 そして、おいしいごはんを沢山もらって、いっぱいほおずりをしてもらって、傷がなおるまで、 ずっとずっと、ずっとゆっくりしていよう。 子れいむの餡子脳の奥に、母と言う名の希望の光が燃えていた。 その輝きを原動力に、満身創痍で、ボロ雑巾のような体で這いずってゆく。 おへやの直前の角を曲がった、子れいむの目に飛び込んできた光景は―― 餡子脳が凍りつく、恐ろしいものを見たかのような、驚愕の表情を浮かべた、姉れいむの残骸と、 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!……」と、餡子のつまった頭部をむき出しにし、 うわごとのように、意味をなさない言葉を繰り返し続ける、母まりさの姿。 床には、餡子の海が広がっており、その中央には、既に絶命し、苦痛に歪んだ顔をした、母れいむの死骸が転がっていた。 あまりの惨状に、言葉を失った子れいむ。 小刻みに震え、白目を剥いてうわ言を繰り返す、母まりさの頭頂部から、すぽん、と音を立てて、丸々と肥えた、 『彼女』のいとし子が、勢いよく顔をだした。 ある意味滑稽なその音は、絶望の淵にいた子れいむを一押しして、地獄の底へと転げ落ちさせるのには、十分すぎるものだった。 母まりさのうわ言が断絶し、完全な沈黙が、幸福だったゆっくり一家の「おうち」の支配者になり代わる。 『彼女』は満足げな羽音を立てて、最良の繁殖法を見出したことを、喜ばしく思った。 若干、ゆっくりどものせりふが少なかったと後悔しています。 至らないことばかりで、申し訳ありません。 お読みいただいて、ありがとうございました。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1341.html
竹林の奥に、ひっそりと佇む、月から幻想郷へと移り住んだ者達が住む永楽亭。 その地下には、和風の屋敷には不釣り合いな内装の研究室がある。その部屋の中で机に座った、看護師のような服を着た銀髪の美し い女性が片肘を突きながらガラスケースに入った何かを見つめていた。 「おねえさん!おめめがいたいよ!おうちかえる!」 大きめのガラスケースに入っているのは、今や幻想郷でお馴染みとなった。ゆっくりれいむだった。 しかし、何やら様子がおかしい。 「なにもみえないよ!」 ゆっくりれいむの両の眼球には、手術用のメスが深々と突き刺さっており。その眼からは、涙と餡子が混ざった液体が流れている。 ガラスケースの中には、その液体が飛び散った跡があり、ゆっくりれいむが痛みで暴れていた痕跡が窺える。 「あらあら、何も見えないのね?それじゃあ、お友達の姿も見えないし、お花見もできないわね?」 微笑みながら、ゆっくりれいむに語りかける銀髪の女性は、“月の頭脳”こと、八意永琳だ。 「ゆっくりできないよ!」 体を左右に揺らしながら訴えるゆっくり霊夢。 「うふふ、私はとってもゆっくりしてるわよ?」 ニコリっとする永琳。その優しい笑顔で何人の男性を虜にしてきたのか。 「ゆっくりさせてよーっ!!!」 泣き叫ぶゆっくりれいむ。 「ゆっくりれいむちゃん、安心して?私はお医者さんなのよ?こっちにいらっしゃい?あなたのお目々を治してあげるわ。」 永琳がそう言うと、少し間をもった後、ゆっくりれいむは声のする前方へ恐る恐る向かう。 ゴツッ 「ゆ゛ぐぅぅぅううぅぅっ!!!」 しかし、ゆっくりれいむの前には当然、ガラスケースの面が立ちはだかっている。両目のメスはより深く突き刺ささる。 実は、こんなやり取りがもう五回程続いている。 激痛に泣き叫ぶゆっくりれいむ。 「あら、ごめんなさい。ケースの扉を開けるのを忘れていたわ。ほら、もうこっちに来れるわよ。」 もちろん、そんな扉は無い。 「もうやだ!おばさんはうそつきだよ!!!」 さすがに知能の低いゆっくりでも、こう何度も騙されていたら少しは学習するようだ。 しかし、ゆっくりれいむがせめてもの抵抗で発した。その単語がいけなかった。 「お・ば・さ・ん…?」 突如、八意永琳の顔が豹変した。顎を思いっきり横にずらしながら歯ぎしりし、眉毛は釣り上がり、目線は斜め上に向かっている。 顔中にシワが走り、血管が浮き出る。 「だ・れ・が、おばさんじゃこのちくしょうがあああぁあああぁあぁぁぁっ!」 永琳は凄まじい勢いで席を立つと、棚から濃硫酸の入ったビンを取り出し、すぐさま元の席にかけ戻り、ゆっくりれいむの 入ったガラスケースの上部の扉を開け、ドボドボと濃硫酸をそそぎ込んだ。 「ゆぅーーーっ!!!」 どんどん溶けていく、ゆっくりれいむ。 「わしはまだまだティーンエイジャーじゃああああああっ!!!」 発狂しながら濃硫酸を注ぎ続ける永琳。 「[[ゆっくり]]ゆるしてね![[ゆっくり]]ゆるしてね!」 必死に命乞いをするゆっくりれいむ。 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ……。」 しかし、ゆっくりれいむはドロドロの液体になり、ガラスケースには饅頭のジュースが出来上がった。 「ふぅっ、ふぅっ、ふぅ……。」 肩で息をしながら、我にかえる八意永琳。 「あらいやだ、もっと時間をかけて楽しむつもりだったのに……。うどんげっ!うどんげっ!!」 「はい!何ですか師匠!!」 八意永琳の弟子、鈴仙・優曇華院・イナバが部屋へと駆けつける。 「このドロドロの汚いの、皿に分けて隣の部屋のゆっくりどもの餌にしておいてちょうだい。」 「はい!師匠!」 ガラスケースを抱え上げ、部屋を後にするうどんげ。 「…!」 ふと、あることに気づく八意永琳。 「あらあら…私ったら…ウフフ……。」 彼女の股は濡れていたのだ。 狂気を操る自分でさえ、師匠の持つ狂気にはかなわないだろう。 ガラスケースの中の、溶けたゆっくりれいむを見つめながら、うどんげはそんなことを思っていた。 今宵は新月、永楽亭の静かな夜は続いていく。 おわり
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/102.html
人里から遠く離れた小さな山に、多くのゆっくりが暮らす森がある。 日当たりの良い広場があり、きれいな川が流れ、木の実を付ける広葉樹で構成されており、 小鳥は囀り、げっ歯類以上の大きさの哺乳類はおらず、妖怪も人間も足を踏み入れないというそこは、ゆっくり達の理想郷であった。 そんな美しい森に、とても生存本能の強いゆっくりぱちゅりーが居た。 他のゆっくりぱちゅりーは自らの運命…先天的に病弱で、長生きする事は叶わない自らの体質を受け入れている。 だが流石にこのゆっちゅりーは格が違った。自らの運命を自らの手で(ゆっくりなので手は無いが)変えようと強く思っていた。 ある日ゆちゅりーが短時間の散歩を楽しんでいると、木の洞に詰まって身動きが取れなくなっているゆっくりまりさがいた。 ふと、ゆちゅりーの拙い思考回路があるアイデアを生み出した。 まりさ種はゆっくり達の中でも殊に活動的だ。その点では、ゆちゅりーの理想と言ってもいい。 そのゆまりさの健康で活動的な肉体を得れば、自分もああなれるのではないか。 無論、肉体を手に入れると言っても脳を移植する訳ではない。元よりゆっくりにそのような知識は無い。 あるのは本能だけ。故に、他者の肉体を得る方法はただ一つ。―――食べる事だけだ。 ゆちゅりーは虚ろな表情で、ゆっくりとゆまりさににじり寄る。 「ゆっ!たすけてくれるの!!?ゆっくりひっぱってね!!!」 「…………」 ゆちゅりーは答えない。というか、聞こえていない。今のゆちゅりーにあるのは強烈なまでの食欲だけだ。 「ど、どうしたの!!?さっさとたすけてね!!!」 「…………」 偶然にも周囲にゆっくりの姿は無い。まるでゆっくりの神があるいは悪魔がセッティングしたかのような状況である。 もうゆまりさの体温すら感じられる程に肉薄している。耳障りな雑音も聞こえない。 ぶよぶよと震える皮は美味そうとしか考えられない。 普段は友愛を喚起させられる体臭も今では食欲をそそる香りだ。 肌身離さずかぶっている帽子や、美しい金色の髪に至るまでが御馳走に見える。 そして、 「ゆ゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!や゛め゛で!!!や゛め゛でよ゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」 思い切り良く頬に食らいついた。その瞬間、口の中をかつて無いほどの至福が駆け抜けた。 ―――すごい。こんなにまりさがおいしいなんて。ゆめみたい。 全身が四散しそうな程衝撃的な味は、ゆちゅりーを虜にした。 一心不乱にゆまりさを喰らう。否、このゆちゅりーはゆまりさをただ食っているのではない。愛しているのだ。 今のゆちゅりーの最大限の愛情表現こそがこの共食いという最も恐るべき行為だった。 「う゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!どうじで!どうじでごん゛な゛ごどずる゛の゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」 一口齧る毎に、一声絶叫される毎に、ゆちゅりーは心身共に活力に満ちて行くのを実感していた。 このような感覚は生まれて初めてだった。母の蔓に生まれ、目を覚ました時ですらここまでの爽快感は無かった。 「ぐがが……お゛ぼぉ゛……ゆ゛……ゆ゛ぐぐ……ゆ゛っぐり゛ざぜでね゛!!!!!」 それがこのゆまりさの最期の叫びだった。後はただゆまりさの残骸を余さず食う音だけが響いていた。 「むきゅぅーん……」 ゆちゅりーは涙した。一時の激欲に身を任せて友を食べてしまった自責の念で。 もう二度と自分の知らない場所にまで連れて行ってくれた相手と会えない悲しみで。 そして、身も心もかつてない程のゆっくりに満ち溢れている喜びで。 もっと。もっとこのエネルギーが欲しい。友を喪うのは悲しいけれど、それを遥かに上回る喜びが得られるのなら。 「だから……!(福山潤の声で)」 翌日の朝、ゆちゅりーは森の中を全速力で駆け回っていた。恐らくゆっくりまりさと同等の速度だろう。 ゆちゅりーは感動している。速く走れるとはこんなに素晴らしいことなのか。それもこれもまりさと一つになったお陰だ。 もっとだ。もっと食べれば、もっと生きていられる。もっとゆっくりできる。そう、食えば食う程―――強くなる。 ……新たな餌を、発見した。 数年後、そこにはかつての貧弱さなど微塵も感じさせない力強いゆっちゅりーが居た。 体躯は通常のゆっくりより一回りも二回りも大きく、その眼力に他のゆっくりはただ畏れるしかなかった。 今やゆっくりれみりゃさえもゆっちゅりーには近付かない。 ぱちゅりー種でありながら餌を横取りされたゆっくりれみりゃの群れ十匹を返り討ちにするような怪物に逆らう程、ゆっくりも馬鹿ではないのだ。 そう。今やこのゆっちゅりーはこの森に住まうゆっくり達の王なのである。 好きな時に好きなゆっくりと共にゆっくりし、好きな時に好きなゆっくりを食べる。それが王の在り方だった。 だが、王はこの生活にも飽きてきた。以前とは比較にならない位強大な生命力を得た王にとって、通常のゆっくりでは物足りないのだ。 もっと。もっと大きくて栄養のある餌が欲しい。際限無い欲望を持つという点では、人間の王とゆっくりの王は大差無かった。 決意するのに、そう時間はかからなかった。王はこの楽園を捨て、新天地へ向かう事を決意した。 大丈夫。今の自分は強い。ゆっくりれみりゃやゆっくりフランでさえ自分を恐れて近付かない程に。 どんな敵が現れようと打ち倒し、食べるだけだ。 そうして王は向かった。幻想郷の中心部にある人間の里へ。 森を出て三時間、里の外れの外れにある小さな集落を発見した。 地面にしゃがみ込み何かをしている人間が居る。第一村人発見である。王はこいつが記念すべき最初の人間だと決定した。 射程距離まで音を立てず慎重に移動する。まだだ。あと十ym(ゆっくりメートル)。あと八ym、六ym、よし今だ―――! その瞬間、人間がこちらに気付いた。だが構うものか。後は飛び掛り、組み伏せ、食い尽くすだけなのだから。だが…… 王は知らなかった。ゆっくりと人間など、同じような物だと慢心しきっていた。 世界で最も強かったのはゆっくりフランで、自分はそれ以上の生物なのだと勘違いしきっていたのだ。 そう、つまり―――ゆっくり内での序列がどうあれ、ゆっくりである限り人間の食料に過ぎない事をまるでワカっていなかった。 「ごらー!おらの畑で何しとるだァー!!」 食い物である筈の人間はそう叫ぶと、手に持った棒切れを振りかざし、王の頭に振り下ろした。 ぐしゃり。 決定的な音を、王は確かに聞いた。懐かしい感覚。自分の意識から立ち昇る死の匂い。 嫌だ。せっかく生きられるようになったんだ。こんな絶望から逃げる為に同胞まで食ったんだ。 助けて、助けて、助けてまりさ。れいむ。ありす。にとり。うどんげ。にいと。あやや。てんこ。ちぇん。さくぽ。れみりゃ。フラン。 助けろ!私は、私はお前らの王なんだぞ……!! と、ありえない光景を見た。森に居た多くの仲間達が自分を見ている。ああ、やっぱり助けに来てくれた……皆! 「たすけろ、だってさ」 「おお、いやだいやだ」 大勢の仲間が、嫌な笑顔でこちらを見ていた。 どうしてこんな顔を向けられるんだろう。 どうしてこんな事になってしまったんだろう。 わたしはただ、みんなとゆっくりしたかっただけなのに…… 「おーい母ちゃん。こんなもんが畑を荒らしとったぞー」 「あんらーお前さんそりゃ『ゆっくり』だよぉ。それを里に持っていくと高く売れるんだわー」 「へぇそうかい。そいじゃちょっくら売ってくらぁ。おぅ、種蒔きは代わりにやっといてくれよ」 「そんな事言ってまた遊んでくるんじゃないんだろうね!いやだよこの間みたいに土産とか言ってエロ同人誌五十冊も買って来るのは」 「へっへっへ、もうあんな事はしねえよぉ。んじゃ行って来る」 「全く。気を付けて行って来てなあ!最近は妖怪が出るとか言うけんねー!」 「おおう!妖怪なんざ俺のコブラツイストでボッコボコにしちゃるけん!」 「調子いい事言うんだから。妖怪になんて勝てる訳……おや、何だいこりゃあ」 彼女の足元には文字が刻まれていた。そこはかつての王が息絶えた場所だ。そこにはこう書かれていた。 「ゆっくりしていってね!!!」 DEAD END